書評「東川スタイル 人口8000人のまちが共創する未来の価値基準」

書評「東川スタイル 人口8000人のまちが共創する未来の価値基準」

北海道・東川町をご存知でしょうか?

北海道の真ん中あたりに位置する、人口減少時代に突入した日本において定住者が増え続けている数少ない町です。

1994年3月には6973人でしたが、2015年12月時点で8105人。東町役場ホームページによると、最新の2017年12月31日時点では8328人まで増加しています。

 

編著者はこの本を「まちづくりトラベルガイド」と定義し、東町を紹介することで未来の町づくりの価値基準を見出そうとしています。

 

編著者:玉村雅敏 小島敏明
著者:吉田真緒
発行:(産学社)
サイズ:A5
2016年3月31日 初版
ISBN:978-4-7825-3432-8



地域や社会に精通した3名が編著者、著者としてクレジット。

編著者は、二人とも慶應義塾大学に籍を置いています。

玉村雅敏氏は総合政策学部教授。公共経営やソーシャルマーケティングなどが専門で、本書の他にも地域や社会についての著書も執筆しています。

小島敏明氏は政策・メディア研究科特任教授。マーケティング戦略、コンセプトワーク、新規事業開発が専門。マーケティングやイノベーションに関する研究に携わっています。

著者としてクレジットされている吉田真緒氏は、ライター・編集者。地域やコミュニティに関する取材・執筆活動を行なっています。

記事を書かれているメディアがありましたので、リンクを貼っておきますね。→EDIT LOCAL

東川町で働く人達が「豊か」であるのはなぜか。

本書は二部構成となっており、前半では東川町の個人レベルの経済活動にスポットを当て、主にお店を開いている人達にインタビューしています。

獲れた卵を使ったオムライスを提供するカフェを併設した養鶏農家、コーヒーショップ、ニットメーカー、うどん屋など多種多様な店があり、みんな生き生きと働いています。

きれいな地下水や自家栽培の野菜、東町で取れた米など、豊かな自然の恵みを使った商品ももちろん魅力。

そしてそれに加え、店を開きながら子育てをしたり、週休3日や週末のみの営業スタイルをとる店があったりと、多くの点で大都会の店とは一線を画しています。

それらをみんな当たり前のこととして受け入れていることが、東川町に暮らす人の生活の質を高めている要因の一つとなっているようです。

活発な役場による、攻めた町おこし。

二部構成の後半は、東川町の町づくりの歴史や施策、特徴について書かれています。

東川町の町おこしを語る上で欠かせないのが「写真の町」事業。→東川町役場 写真の町ウェブページ

役場がこのイベントを1985年に発表し、町に定着するまでの紆余曲折が本書では詳細に書かれています。

このプロジェクトを長年に渡って遂行・発展させるために、まるで企業のような営業活動や企画提案・運営能力が培われ、現在の役場にもそれが継承されています。

そのため、国際事業交流やアウトドアショップ「モンベル」の出店など、東川町には攻めた施策が多く見られ、それが新たな町おこしにつながる好循環が生まれているようです。

根底にある東川町への愛着。

本書全体に通じるキーワードとして、「東川町への愛着」というものを感じました。

暮らしている人々や役場で働く人々は、みんな東川町に強い愛着を持っており、その土地の特長を活かしたり、積極的に地域を盛り上げようとする意識を持っています。

東川町に移り住んでくる人はたくさんいます。東川町で生まれ育った人はもちろん移住者にも、東川町で暮らすというアイデンティティが生まれているようです。

私たちのなかに「東川人」みたいな意識があって、協力してくれるアウトドア業界の人たちを、アットホームにおもてなしするんです。

(138ページ)

アウトドアイベントを運営する山岳ガイドの方のこの言葉に集約されていると思います。

 

自然の美しさや暮らしやすさ、変化を恐れない役場の姿勢など、この町が持つ多くの魅力に人々は惹きつけられます。

その土地に愛着を持たせるということが、地域を豊かにするには何より大事なのではないでしょうか。

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