書評【空港は誰が動かしているのか】(轟木一博)

書評【空港は誰が動かしているのか】(轟木一博)

日経プレミアシリーズ306【空港は誰が動かしているのか】

著者:驫木一博
出版社:日本経済新聞出版社
サイズ:新書(240ページ)
2016年5月9日 初版
ISBN:978-4532-26306-5

実に読み応えのある1冊。



著者は、関西国際空港と伊丹空港の経営統合・コンセッションを担当。

著者の驫木一博氏は、運輸省(現国土交通省)航空局~新関西国際空港株式会社に出向し、この巨大プロジェクトの実務を担当した人物。

理路整然としながらも感情が伝わってくる文体で、専門的な内容だがとても引き込まれた。本書以前に『航空機は誰が飛ばしているのか』という本を書いておられる。

どうやら著書はこの2冊のようだが、おそらく元々文章が上手い方なのだろう。ぜひ前著も読みたくなった。

具体的・実務的に書かれたドキュメント。

まず前半は、空港というビジネスモデルがどう成り立っているのか、またなぜ採算が合わない空港が多いのか、といった内容が書かれている。

空港の経営について何も知らなかった僕はすぐに引き込まれたが、途中からは、関西国際空港と伊丹(大阪国際)空港の経営統合からコンセッションが行われる過程についてのドキュメントが始まる。当時の状況や話の流れの記録が克明に描かれており、その詳細さに驚かされる。

ちなみに「コンセッション」とはなにか、以下Wikipedia引用。

コンセッション方式

コンセッション方式Concession)とは、ある特定の地理的範囲や事業範囲において、事業者が免許や契約によって独占的な営業権を与えられたうえで行われる事業の方式を指す。

ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典

国土交通省や国100%出資の「新関西国際空港会社」が持っていた関西国際空港・伊丹空港の運営権を、オリックスとヴァンシ・エアポート(フランスの会社)が手を組んで設立した「関西エアポート株式会社」に移管する、という話である。

この巨大プロジェクトを進めていくにあたり、しがらみや旧態依然とした体質にとらわれた役所を動かしていく流れが詳細に書かれている。

 

コンセッションという言葉は、このプロジェクトをきっかけに多くの人が知ることになった。

「赤字の大型公共物を、民間のノウハウを使って黒字にできれば最高じゃん」という具合に進めば苦労はないのだけれど、公共法人の内部問題をはじめ、関係者の数だけ問題があるという実態が見えてくる。

半ば愚痴のような部分もあるが、利害の異なる多くの関係者をまとめ、調整していくのがどれだけ骨の折れる仕事なのかが伝わってきて、著者についつい親近感や同情を覚えてしまった。

著者の、仕事に対する圧巻の熱意。

著者の空港そのものや公共法人、コンセッションなどについての知識の豊富さに驚かされた。地域にとっての空港というものの存在やその機能、公共法人の運営の問題点、コンセッション契約を行う意義など、著者の広範囲に及ぶ知識がなければこのプロジェクトは完遂されなかっただろうと思う。

またそれに加え、何より仕事に対する熱意、情熱の大きさに感銘を受けた。

著者は次のように書いている。

振り返って思うのは、属人的な知識・能力・改革意欲の結集でしか改革は成し遂げられないということだ。

(147P)

次々と問題が出てきてそのたびに取り組み、多くの利害関係者それぞれの事情を鑑みながらバランスをとり物事を進めていくという作業はとても困難なものだったと思う。もし自分がその立場だったらと思うと、とても同じ質の仕事が出来る気がしない。

読み進めながら、今の自分はここまで一生懸命に自分の仕事に取り組めているだろうか、と何度も思わせられた。反省しなくては…。

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