【書評】 MUJIが生まれる「思考」と「言葉」

【書評】 MUJIが生まれる「思考」と「言葉」

【MUJIが生まれる「思考」と「言葉」】

著者:株式会社良品計画
発行:株式会社kADOKAWA
サイズ:四六(264ページ)
2018年7月20日 初版
ISBN:978-4-04-602269-1

シンプルで無駄のない、まさに「MUJI」を表すような装丁。

ちなみに本書の定価は税抜1,842円、税込だとぴったり2,000円。無印良品では商品の税込価格をキリの良い数字にすることが多く、らしさが表れた値段設定。

さてさて、その中身は…。



著者は「株式会社良品計画」。多くの「言葉」で構成された本。

会社名が著者としてクレジット表示されているのは面白い。会社全体としての思考と言葉をあらわした、ということだろう。

実際に内容を構成したのは、良品計画代表取締役会長・金井政明氏。

 

章ごとに内容を分けているが、全体的な構成としては、良品計画で共有されている短い言葉たち(金井氏が作ったものはもちろん、金井氏が影響を受けた人物や書物の言葉など)を提示し、それについて解説を加えていく形となっている。

その言葉の数、実に53。

さらに、あとがきの代わりとして20の言葉が載っている。金井会長の人脈の広さや読書愛、仕事愛が伺える。

 

本書には多くの人物が登場する。セゾングループ総帥の堤清二氏やプロダクトデザイナーの深澤直人氏といった重要な人物は何度も取り上げられているが、その中でも読後特に印象に残るのが、グラフィックデザイナーの田中一光氏。

無印良品という概念の形成に大きく寄与した人物だ。

無印良品のホームページには田中氏との関係性を表現した専用ページ「田中一光と無印良品」があり、同氏が残した多くの言葉を知る事ができる。

無印良品という言葉の意味。

本書には、良品計画のいわゆる「会社」としてのビジョンや、理想とする現場の働き方(風通しをよくするなど)についても書いてあるが、個人的に興味を惹かれたのは無印良品という概念についての箇所だ。

無印良品といえば、食品や文房具、衣類など商品のラインナップが広く、シンプルなデザインで作られ、そこまで値段は安くはないが極端に高いわけでもない、というイメージだった。

それらは決して間違ってはいないのだが、その商品が開発される裏には、驚くほど強い意志、大きな理念が秘められていた。

まさにこの本の根幹に関わる部分なのでその詳細は割愛するが、「何となくシンプルで無害なブランドだよな」というくらいのアバウトなイメージで無印良品を捉えている人には是非ともこの本を読んでほしいと思う。

僕もそうだったように、何かしら思わされるところがあるはずだ。

 

一つ言えるのは、この本は前回取り上げた「【書評】マツダがBMWを超える日(山崎明)」と全く対極にあるという事。

そもそも「無印」とはどういう意味なのか、そしてその意味が目指すところはどこなのか。

もしかしたら、僕みたいなライトな層だけでなく、無印良品のファンの方にとっても知らなかった事がたくさん書いてあるのではないだろうか。

完成しない「無印良品」。

印象に残ったのは次の文章。

無印良品とは何かという問いに対する、確固たる答えはありません。

(213ページ)

だからこそ、53という数の言葉でもって無印良品という概念を説明する必要があるのだろう。

その概念を共有・体現できるデザイナーやクリエイティブな人が重要視されているのもそのためで、はっきりとは見えないが確実に存在する「無印良品の枠」を認識できる人が、無印良品を形作っていくのだと感じた。

 

読む前にパラパラとページをめくってみるとそんなに字が多くなく、さらっと読めてしまうんじゃないかと思ったが、読み応えのある一冊だった。

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